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JIKEI MEDIAに國原教授のインタビューが掲載されました

ドイツ留学でつかんだ「ぶれない医療」

心筋梗塞や狭心症、大動脈・冠動脈の疾患など、心臓の病気を患う人々と向き合いながら、東京都「急性大動脈スーパーネットワーク」協力施設として緊急・重症の患者さんを受け入れるなど、ハイリスク症例にも果敢に挑む心臓外科。チームを率いるのは、日本ではまだ珍しい「大動脈弁形成術」の第一人者として知られる國原医師です。足かけ9年間にわたるドイツ留学時代に培われたという、國原医師の医療者としての信念に迫ります。

内視鏡下手術、オフポンプ手術、そしてロボット手術。心臓の治療は今、どんどん「低侵襲」の方向に向かっています。従来の手術よりも傷が小さく、体への負担が軽くて快復も早いというのがその理由。しかし私は、この動きに疑問を感じています。「95%以上の症例にオフポンプ術を施行」「内視鏡下手術の施行率は97%」などと競い合うように先端医療を追いかけるその陰で、肝心の患者さんが置き去りにされている気がしてなりません。

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例えば人工心肺装置を使い、心臓を止めて手術する従来のオンポンプ術と、心臓を動かしたまま手術するオフポンプ術を比べた時、果たしてどちらが患者さんのためになるのか。オフポンプ術はより生理的ではあるものの、血管をよけながら断崖絶壁のような狭い領域で施術しなければならないため、視野が悪く、術者の動きが制限されます。その結果、理想ではないところに吻合(ふんごう)したり、つなげるべきバイパスの本数を減らしたりと、工程を省略してしまうことも多い。

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一方のオンポンプ術は、体への負担は増すものの、広々としたスペースで落ち着いて施術できるため、ミリ単位の正確さで行き届いた手術ができる。術後すぐの時点では両者の違いはわからなくても、10年、20年と長いスパンで見れば明らかな差が出てきます。

かくいう私も、かつて最先端を追いかけていた時期がありました。転機が訪れたのは、ドイツの大学病院に留学した時のこと。当時のドイツは日本よりも外科技術が進んでいましたが、先端医療とは一線を画すオーソドックスな手術が主流で、拍子抜けするほどでした。

患者さんに合った治療法を、柔軟に選択する

日々、患者さんと向き合う中で、「ぶれない医療」はどのような形で表れるのか。私が常に心がけているのは、幅広い治療法の中から、目の前の患者さんにとって最適な治療を見極めることです。

例えば心臓弁膜症では、悪くなった弁を取り替える「弁置換術」が一般的です。しかし私たちは、年齢が若くて体力のある方には自身の弁を温存する「弁形成術」を、持病があり体力が心配な方には、開胸手術をしない「カテーテル治療」をというように、患者さんの状態やライフスタイル、本人の希望を総合的に判断し、ベストな治療法を選んでいます。


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