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東京慈恵会医科大学心臓外科主任教授 國原孝の写真

この度は当教室のホームページをご覧頂きまして、誠にありがとうございます。
主任教授の國原孝と申します。

生い立ち

もともと東京で生まれ育ち、都立小石川高校卒業後、北海道大学入学。恵迪寮の六年間で人間関係の大切さを学び、北海道の大自然を謳歌しつつ、医学部スキー部ではクロスカントリースキーの厳しい競技の世界も経験してまいりました。

ドイツでの経験

卒後は北海道大学循環器外科ならびに関連病院にて研修後、足かけ九年間、ドイツ・ザールランド大学胸部心臓血管外科に勤務。約4600例の手術に参加、うち1900例で執刀する機会に恵まれました。なかでも同科を主宰するシェーファース教授は大動脈弁形成術の世界的権威で、大動脈弁閉鎖不全症を患う若年患者さんに対して人工弁置換術を回避する画期的な手術に数多く接することができたのは貴重な経験でした。

豊富な経験に裏打ちされた良好な成績

2013年12月からは心臓血管研究所心臓血管外科部長として大動脈弁形成術のみならず数多くの重症症例を担当し、在籍した約4年半の間には急性大動脈解離も含む心大血管手術の在院死亡率0.3%を達成することができました。そして2018年6月1日に日本で最も伝統ある教室を引き継いで、早6年が経とうとしていますが、同様に良好な成績を維持することができています。

「患者ファースト」の姿勢

このような良好な成績を残すことができたのは、わたしの従来からのポリシーである「ぶれない医療」、木で言えば力強い幹を持つことのお陰だと信じています。

超高齢化社会に突入し、増え続けるハイリスク症例を安全に手術し、なおかつその効果を長期的に持続させて生命予後を改善するために現場にいま最も求められているのは「創の小ささ」や「心臓を止めないでやり遂げる」のを競い合うのではなく、真に患者さんのための最適な方法を柔軟に選択する能力ではないでしょうか? すなわちこれこそ「見栄えファースト」、「技術ファースト」、はたまた「外科医ファースト」ではなく、「患者ファースト」の姿勢だと信じています。

“One of them” から”Only one”へ

もちろん、長持ちする手術を安全に施行できることが担保されれば、小切開低侵襲手術や経カテーテル治療も大事なオプションと考えており、適応を慎重に選んで行っております。すなわち教室のポリシーとして、患者さんに“One of them(大勢のうちの一人)” ではなく”Only one(唯一の一人)”として接するように心がけております。ますます複雑化する病態に細やかに対応するテーラーメード医療が脚光を浴びているのと同様です。本邦で最も長い実績を有する東京慈恵会医科大学心臓外科学講座を主宰するにあたっても、この信条は揺らぐことはなく、本学の建学精神である「病気を診ずして病人を診よ」とも相通ずるものがあると思います。

「慈恵で手術を受けて良かった」と思えるように

力強い幹をさらに支えているのは地中に広大に張り巡らされた根ですが、根は外からは見ることができません。陰ながら良好な成績を支えてくれる多くの優秀でプロフェッショナリズムにあふれたスタッフと共に、病に悩む患者さんが以前と同じ機能と生活の質を回復できることを唯一の目標としてわれわれは常日頃診療に従事しています。ひとりでも多くの患者さんのお役に立てればわれわれにとってもこの上ない幸いです。

2023年8月吉日國原 孝