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胸部大動脈瘤

胸部大動脈瘤とは?|大きさだけでなく「変化」を見ながら治療します

胸部大動脈は、心臓から送り出された血液を全身へ運ぶ重要な血管です。胸の中では、心臓に近い部分から上行大動脈、弓のように曲がる弓部大動脈、さらに背中側へ下っていく下行大動脈へと続いています。胸部大動脈瘤は、この胸の中を通る大動脈の一部が正常よりも膨らんだ状態です。大動脈瘤は症状がないまま、CTなどの画像検査で偶然見つかることも少なくありません。


治療方針は「大きさだけ」で決まりません

大動脈瘤が見つかった場合、すぐに手術をするとは限りません。治療方針を決める際には、まず大動脈瘤が「どのくらい大きいか」を確認します。さらに、過去の画像と比較して「どのくらいの速さで大きくなっているか」も重要です。また、瘤ができている場所によって治療方法が異なるため、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈のどこにあるかを確認します。年齢、体格、持病など患者さんごとの背景も含め、これらを総合して治療の時期や方法を検討します。


手術を検討する目安

大動脈瘤は、大きくなるほど破裂や大動脈解離などの重大な合併症を起こすリスクが高くなります。そのため、一定の大きさを超えた場合には手術を検討します。ただし、「何cmになったら必ず手術」という単純なものではありません。上行大動脈などでは5.5cm前後が重要な手術検討の目安となりますが、患者さんの状態や大動脈瘤の特徴によっては、5.0cm前後から専門施設で手術を検討する場合もあります。小さい段階では、定期的な画像検査と血圧管理を行いながら経過をみます。

「どれくらいの速さで大きくなったか」も重要です

大動脈瘤では、現在の大きさだけでなく「以前と比べてどのくらい大きくなったか」を確認することが重要です。例えば、50mmから53mm、56mmというように短期間で拡大している場合には注意が必要です。急速な拡大は、大動脈の状態が変化している可能性を示すため、手術を検討する重要な材料になります。そのため、定期的に画像検査を行い、過去の検査結果と比較することが大切です。


治療には大きく2つの方法があります

大動脈瘤の治療には、大きく分けて開胸手術による人工血管置換術と、血管の内側から治療するステントグラフト内挿術があります。人工血管置換術では、まず大動脈瘤となっている部分を切除し、その部分を人工血管に置き換えます。大きな手術になりますが、病変そのものを取り除いて人工血管に置換する治療法です。一方、ステントグラフト内挿術では、血管の内側にステントグラフトを留置し、血流が大動脈瘤に直接入り込まないようにします。身体への負担が比較的小さい一方、病変の場所や血管の形によって適応を判断する必要があります。

ハイブリッド治療

開胸手術とステントグラフト治療を組み合わせた治療法です。大動脈瘤が上行大動脈から弓部大動脈、下行大動脈へと広範囲である場合などには、血管外科と協力し、開胸手術と血管内治療(ステントグラフト治療)を組み合わせた方法を行なっております。


大動脈瘤が見つかったら

大動脈瘤が見つかったら、まずCTなどの画像検査で大動脈の大きさや形、病変の場所を詳しく確認します。その後、定期的に画像検査を行い、以前の検査結果と比較して大きさに変化がないかを確認します。大きさや拡大速度、病変の場所などから、経過観察を続けるか、手術などの治療を行うかを判断します。経過観察中も、血圧管理、禁煙、適切な生活習慣を心がけることが重要です。


突然の強い胸痛・背中の痛みには注意

胸部大動脈瘤がある方では、突然の激しい胸痛や背中の痛みが現れた場合には注意が必要です。また、失神や意識が遠のく、突然の麻痺、ろれつが回らないなどの症状が起こることもあります。このような症状が突然現れた場合、大動脈解離など緊急性の高い病気が起きている可能性があります。症状が自然に軽くなるのを待たず、すぐに救急車を要請してください。


まとめ

胸部大動脈瘤は、「何cmあるか」だけでなく、「どこにあるか」「どのくらいの速さで大きくなっているか」を確認することが重要です。定期的な画像検査で変化を確認し、必要なタイミングで適切な治療を行うことが大切です。

  • 参考:
    • JCS/JSCVS/JATS/JSVS 2020 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン
    • 2022 ACC/AHA Aortic Disease Guideline
    • 2024 EACTS/STS Aortic Guidelines

この記事の監修医師

國原 孝

主任教授國原 孝

1991年、北海道大学 医学部卒業。2000年からはゲストドクターとして、2007年からはスタッフとして計9年間、ドイツのザールランド大学病院 胸部心臓血管外科に勤務し、臨床研修に取組む。2013年より心臓血管研究所付属病院 心臓血管外科部長、2018年より東京慈恵会医科大学附属病院 心臓外科 主任教授を経て、2022年より宇都宮記念病院 心臓外科 兼務。